宮城県には離島振興法指定の有人離島が9島存する。そのうち外海に位置する1島(江の島)を除く8島がいわゆる「内海・本土近接型」で、うち6島はさらに本土の都市への通勤・通学圏ともなっている。しかし、人口・世帯数はいずれも減少傾向にあり、しかも年少人口率が9島平均で15%と低く、逆に高齢化率が21%と高い。特に江の島と田代島は、高齢化率がそれぞれ30%、44%、年少人口率が2.7%、0%と、地域社会としての島の維持・存続を問うならば人口の再生産が不可能となっている。 離島の産業は基本的には漁業が基幹であるものの、就業者割合では(平成2年国調)9島平均で46%である。それに対して第3次産業就業者が35%にも上る。大島や浦戸諸島に製造業やサービス業従事者が多い。つまり、産業としての漁業は高齢化が進行する中で「高齢専業漁家」がその中心となってきており、通勤圏離島においては非漁業化がみられる。特に、全体的に前者の特質を有しつつ、江の島に典型的な「挙家離島」や〈中高年層の残存→高齢化の進行→本土流出の子供との同居=離島〉、田代島において生じている中高年齢者の〈夏場=島暮らし、冬場=本土流出の子供との同居〉という、季節的な居住地移動の例が存する。同様の事例は、網地島においても生じていることが明らかとなった。 高齢化、離村者の増加、季節的住み替え等々によって地域生活の変容=ぜい弱化が生じているが、同時に、伝統的な生活習慣・生活文化の消失をも結果している。従って、本土近接離島の住民意識としては、大島や出島、浦戸諸島のように架橋による本土化を強く望む傾向にある。それは、島内居住者の生活防衛(例えば、通院や生活物資獲得)意識のみならず、流出後継者層の島に残した老親との交流を実現するものとしての意識に基づくものであることが判明した。
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