研究概要 |
教育上恵まれない子ども(educationally deprived children)を対象とする補償教育政策立法である「初等中等教育法」(ESEA,1965年)タイトルIとその1960・70年代の改正条項、並びに「教育統合改善法」(ECIA,1981年)チャプター1およびその1988年改正条項について、補助金交付の条件としてのマンデイトの分析を行った。その結果、1970年代のマンデイトの強化は、もっぱら連邦補助金が適正に補償教育プログラムに充当されるように、補助金の配分原則やプログラムの計画・実施手続き過程を細密に規定するという性格のものであり、特に補償教育対象児童生徒の父母からは観迎された。 これに対し,1988年のECIAチャプター1の改正によるマンデイト条項の強化は、主に補償教育によって恵まれない子どもたちの学業成績が向上しているかどうかを標準テストで測定し、学校・学区・州政府の目標達成上の責任を明確にし追求する、新たなアカウンタビリティ・システムを義務づけるものであることが明らかになった。このことは、米国教育の地方自治が形骸化し、中央集権化の危険性を強めていると同時に、父母住民が教育統治の主体として、教育の機会均等を求めて、益々州政府や連邦政府の、とりわけ財政上の責任を追求し、学校ないし学区を基礎にした教育の地方自治を発展させていく可能性をも示している。 本研究により、学校一学区一州一連邦政府の新しいシステムづくりの中で、連邦教育省は、国家教育目標(ブッシュ政権の2000年までに達成すべき6つの目標やクリントン政権の7目標など)を管理し、達成していくための政策官庁として再編されてきていることを明らかにすることができた。
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