本研究は、消費社会における教師の実態および役割を明らかにする実証研究である。当初、エスノグラフィーの手法を用いての事例調査を企画した。しかしながら、調査対象校の受け入れが遅れたため分析が進まず、現時点では、それに先立って実施したアンケート調査の知見を示すにとどまる。 アンケート調査は、福岡県の中学校教師を対象に実施し、次のような知見を得ることができた。 1.変わる子ども‥…‥1).8割を超える教師が「生徒を指導しにくくなった」と回答している。 2) この背景には、子どもの側の次のような変化があると考えられている。消費社会、情報化社会の影響、さらには家庭のしつけの低下を遠因として、子どもに「まじめ」さが欠落し、自己中心的態度・受動的態度が広く見うけられ、また公共ルールの欠如等、規範意識の低下が顕著である。その結果、学校に存在意義を認めず、教師の権威を無視する子どもが増加している。3) しかもこの傾向は、都市部の子どもに、より顕著にみられる。 2.変わる教師‥‥‥1) こうした状況に直面して、多くの教師が「先の見えない指導をしている」と感じている。 2) しかしながら、現時点では、それを打開するために手本とするような教師も少なく、教師としての成長を遂げるうえで重要な意味をもつ教師集団にも、「私生活主義」が広がっており、従来みられたであろう相互成長の機能も低下している。 3) その結果、変化する子どもに、どのような指導を行えばよいのか、変化する時代の新しい教師モデルを探しあぐねているのが、教師の現実である。とりわけ、教師としての使命感を強く有する者ほど、こうした状況に焦燥感を抱いていることが明らかである。
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