研究概要 |
研究目的:本研究では高齢精神遅滞者のサービスを考えるため,生涯発達の観点からみた高齢精神遅滞者のQOLに着目し,サービスシステム構築のための基礎的知見を提供することにある.結果:1.高齢精神遅滞者の実態把握:(1)精神薄弱者授産施設に在所する中・高齢者23名(35才〜63才)を対象に集団面接と個人面接を実施した.同性の3〜4名を1組とした6グループで1時間30分の集団面積と10〜15分の個人面接をした.面接の中で表明された生活感情は極めて多彩であった.総じて社会・情緒的側面での否定的感情の発露が目立ち,労働や余暇に生活の意義を認める発言が多かった.在所している施設や現在の生活への評価には,個人の生活歴の影響が強く認められた.(2)精神薄弱者更生施設に長期に在所する高齢者6名(53才〜60才)を1グループ3名を1組とした2グループで,1時間20分の面接を3か月毎に計4回づつ集団面接を行った.話の内容は多彩であるが,面接を重ねる毎に内面を吐露する発言が増加する.QOLの構成要素では特に健康,社会的,情緒的関係,労働,レジャーは詳しく語られ,家族,幼小期の思い出の話は少ない.概して,施設での現在の生活には満足感を持ち,高齢化に対する不安は自分が寝たきりになることに対してであった.代々の施設長に対する個人的な思慕の情が強く表明された.授産施設と更生施設入所者は共に労働,娯楽,健康への高い関心が示されたが,後者は退職後の軽い活動を希望している.また,中・軽度の遅滞者は面接が十分に可能であり,自己弁護の観点からも本人の話の傾聴は重要であろう.2.高齢精神遅滞者のQOL評価法の開発:QOLの評価法に関する内外の研究の展望と資料の収集・整理を行った.一般高齢者のQOLに関する研究はかなり進んで来ているのに対し,高齢精神遅滞者のQOLの研究はほとんど見られない.公表された研究成果と実態調査に基づく基礎資料の収集・分析が必要である.
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