研究課題/領域番号 |
04610181
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文化人類学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小谷 凱宣 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (40111091)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1993年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1992年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | アイヌ文化 / 北海道 / フレデリック・スター / アイヌ研究 / 先住民文化 / Frederick Starr |
研究概要 |
1、フレデリック・スターが明治時代末期に本国アメリカに持ち帰ったアイヌ関係資料の所在がほぼ明らかになり、現地調査もオレゴン大学図書館所蔵の写真資料を残すのみである。その所在場所と資料内容は、次の通りである。ブルックリン美術館-民族学資料、書簡類の一部;ベロイト大学-小谷部全一郎収集の民族学資料;シカゴ大学-フィールドノート、書簡類、新聞切り抜き;オレゴン大学-アイヌ絵、スライド(写真)類。 2、アイヌ・コレクションとその収集背景を示すフィールドノートの内容と、ヨーゼフ・クライナー氏らによる西欧アイヌ資料調査の結果とを比較対照すると、明治時代後半のアイヌ文化について、次の事項を指摘できる。 1)道央のアイヌ文化の変容は進んでいたが、その変容程度は一律でなく、地域的差異があった。とくに日高地方沙流川流域はアイヌの人口密度が高く、人口集中地の一つであったが、明治30年代後半から急速に文化変化が進んでいたことを暗示している。 2)フィールドノートの記載内容から彼の資料収集方法と資料内容がわかり、そのことから逆に、明治37年と43年当時、日高地方のアイヌ村落の状況が復元できる。アイヌの伝統的な住居形態と狩猟漁労などの生業形態は変化しつつあり、いっぽうでは日本人の植民、定住が進行していたことが推定できる。しかし、収集資料の中に漆器類などが相対的に少ないことから、宗教儀礼などのアイヌの伝統的生活は維持されていたと解釈できる。 3)日高地方のアイヌ文化の変容は明治時代末から大正時代に著しく進み、昭和初頭には伝統的村落生活の維持は難しくなっていたと推測する。国内の研究機関によるアイヌ資料の本格的な収集がはじまったのは昭和年代の初頭からである。 4)スターのアイヌ関係資料は、日本人研究者がアイヌ研究に着手する一世代前の文化状況を反映しており、アイヌ文化の変容を復元するための貴重な基礎的資料となる。
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