研究概要 |
本年度は,研究実施計画にしたがって,本研究の基礎となる「宗門人別御改帳」「宗門送り状」などの史料の調査・収集とその「家族カード」化という作業を行い,これとは別に集中的な収集と解読とをすすめた村方一件文書とつき合わせて考察し,報告書をまとめ上げることができた。 まず、長野県東筑摩郡朝日村の旧西洗馬村については,かつて村役人を勤めたことのある4軒の家に所蔵されてきた「宗門人別御改帳」を漏れなく朝日村の公民館へ借用し,適宜ここへ通って筆写・収集をすすめた。旧西洗馬村は,戸数200軒に近く,村内は上組・下組に分けられており,「宗門人別御改帳」の残存状態も異なっており,上組は文政6年(1823)から43年分,下組は天保4年(1833)から35年分を筆写し,さらにこれを「家族カード」の形にまとめ上げた。 長野県東筑摩郡明科町の旧大足村については,すでに昨年度に「宗門人別御改帳」の収集・筆写を行い,いわゆる「家族カード」の作成まで行って,家数で108軒,人数で2500人弱の家族・個人情報をまとめてあったが,加えて本年度は集中して村方係争関係を中心に「一件文書」(一紙文書)の採集・筆写をすすめた。この成果を含めて,本学部の紀要(人文科学論集)に「近世後期村方騒動の背景」と題した論文を発表した。さらに,この論文を含めた別冊の報告書『日本近世・近代における村落生活史の基礎的研究』を刊行した。
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