今年度は国会図書館憲政史料室を中心にして中央政界史料(岡山県関係者の犬養毅・宇垣一成・松本学ら)を収集すると共に、岡山県において総合文化センターの犬養家文書、野崎家文書・大原家文書を収集した。 両史料の比較検討により、明治期及び大正・昭和期の地方名望家と地方民衆の結び付きと政治・経済的関心、地方名望家と中央政界の結び付きとその動向を解明しうると思う。特に岡山県は自由民権運動の強力に展開した地域でありながら、帝国議会開設期には犬養に代表される改進党の圧倒的優位となった地域であり、地価修正問題、地租軽減問題などをはじめとする租税負担問題にいかに対応していくのかの問題は極めて重要な問題を含んでいる。また、この地域は紡績、銀行、鉄道など近代産業資本が勃興した地域であり、地元資本がこれらの問題にいかにかかわり合っていったか、また東京、大阪をはじめとする県外資本といかに関係していったか、などの産業経済分野にも焦点を合てて、政治と経済の結び付きを解明していくことが重要な課題となる。 今回、収集した史料を分析することによって、岡山県を事例に、近代日本における地方政治・地方経済の基礎過程を解明することができると思う。その際、特に近代日本の歴史を特色づけている戦争に関し、地方名望家及び地方の民衆がどのように反応し、またどのように対応していくかの問題に留意してゆきたいと思う。
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