研究概要 |
(1)1980年代には、「インド植民地官僚制度」に関する研究が英・印両国で次々と発表された。その主要な課題は(1)植民地統治機構としての官僚制度の運用システム(2)官吏任用と植民地政策との連関(3)英国系とインド系官吏の任用数とその経年的変化、及び(4)インド系官吏任用の増大とその政治的背景、であり、本研究課題は主として(3)(4)に焦点を当てる。 (2)「高等文官制度(Indian Civil Service=ICS)」は、1860-70年代に大きく改編され、インド社会の実情に則した行政機構に再編された。その一環として、それまで英国系に独占されていた高等官僚にインド人を部分的に採用する施策を行った。上記課題の研究目的は、こうした官僚制度の実態、特に英系とインド系の官僚について、個別具体的なデータを収集し、政策決定過程との関連を明らかにすることである。 (3)研究成果として、特にインド人官僚が増加する20世紀初頭に着目し、1925年に刊行された、官僚の人事動向リスト(Indian Civil List)を元に、高等文官を網羅的に抽出し(1)氏名(2)教育歴(3)生地(4)赴任地(5)地位(6)主要業績について、個別にデータを抽出した。 (4)上述の個別データを元に試行した、Indian Civil Service-Data Base of Indian Civil Service Members,1925-(昭和62年度科学研究費、一般研究Bによる研究。ただし同年文部省在外研究による英国留学のため、研究費を辞退し、研究成果の一部刊行)を改定し、新たに改訂版のデータベースを作成した。この基礎的な資料集には、1925年時点で総数488名のインド高等文官が収載しており、各官僚ごとに、(1)〜(6)の内容が記述されている。今後更に1925年以前、及び以後の時期について、ほぼ10年ごとに同様の資料を収集し、刊行する予定である。
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