近世、近代フランスの新聞・雑誌などの定期刊行物について、わが国の諸大学・諸研究機関に散在する史料の調査・収集を行なった。首都圏(東京大学、早稲田大学)、中京圏(名古屋大学)を始め、関西圏(京都大学等)の諸大学で現地調査を実施し、包括的な文献所在リストの予備作業を終えた。とくに同志社大学(田辺校)にて、当時の代表的な雑誌『メルキュール』の史料収集・分析を数次実施し、研究代表者のジャーナリズム研究のケーススタディとなる『メルキュール』研究に先鞭をつけた。さらに、18世紀後期から革命期にかけてのフランスジャーナリズム界の中心人物であったC.-J.パンクックというジャーナリストに焦点をあて、これに関する個別分析を開始した。とくに革命前夜におけるパンクックの活動を通して、情報社会、ジャーナリズム成立の諸相を分析した。これについては92年度関西フランス史研究会大会、北陸史学会で研究報告を行ない、今後は革命期へと研究を進展させる所存である。アンシァン・レジーム期フランスの新聞・雑誌総体については、フランスのリヨングループ刊行の事典(91年)を史料にしてパソコンを使用した数量分析を継続実施中であり、タイトル・テーマ・カテゴリー別のデータ分析等を通して順次公表の予定である。また「社会文化史」、「政治文化史」という新しい研究概念に注目し、近年の代表的研究者であるR.シャルチエの文化史研究、さらには社会学者P.ブルデューや〓.エリアス等の理論構築を射程に入れつつ、近世・近代フランスの情報社会の形成と定期刊行物がこれに与えた影響について新しいパースペクティヴが獲得できるよう考察を深めつつあり、論文執筆の準備をすすめ、近く作成の予定である。以上のような史料調査、研究分析、研究報告・発表をふまえた上で、具体的な論稿の執筆が課題として残されている。
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