研究概要 |
本年度の研究実施計画として,以下の4項目を立て研究を進めた。 1 奈良国立文化財研究所保管の平城宮・京出土土師器を考古学的手法で整理分類。2 分類成果を自然科学的手法で検証。3 京住民用の消費財の搬出先として最も可能性の高い京周辺諸国(河内・和泉・摂津・山城・伊賀国)の土師器の調査。3 産地同定に資するため,全国各地の当該時期の土師器資料の集成と調査。本年度は主として西日本地域を対象。以下、各項毎に進携状況ならびに成果の概要と課題について述べる。 1については,宮・京で優勢な土師器は大きく2群に分類できたが,この他にも全体に占める割合は極めて少ないが,畿外地域,畿内産と目される土師器の存在も明らかになった。例えば,西日本地域では,一般に丸底甕であるのに対し,宮・京出土甕には平底長胴甕が存在し,これらについては東北地方産の可能性もあり,予定外ではあったが,東北地域の甕の調査を行った。その他にも,丹塗のロクロ調整土師器や須恵器製作技法で作られた土師器もあり,これらについての産地同定も大きな課題となる。宮・京で有勢な2群は,大和と河内産と目されるが,両国内においてもいくつかの土師器生産グループがあり,より綿密な研究によって産地を同定する必要がある。2については,土師器の場合には,従来行ってきた蛍光X線非破壊分析法では,不十分なため,現在,分析法を検討中である。3については,河内・摂津の土師器の調査を実施したが,他地域については十分な調査ができなかった。4については,平城京周辺諸国については,ほぼ集成を完了した。本年度の研究を通じて,(1) 類別した群,例えば河内型としたものが,果して河内で作られたものなのか,京に来て作ったものなのかを実証的に検証すること,(2)全国各地の土師器集成,この2点が今後の課題として残った。
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