日本占領初期において占領軍は女性に関する広範囲な改革を実施したが、その具体化の推進力となったのは民間情報局のE・ウィードを中心とする占領軍の女性職員であった。ウィードは女性職員と日本の女性指導者との連帯をはかることにより、GHQ上層部の意図を超えて女性のブロックを形成し、政策立案・実施過程に重要な役割を果たした。 本研究では労働省婦人少年局の設置・存続運動および戦後の女子労働者の労働条件に影響を与えた労働基準法の制定過程における女性の連帯活動の展開を分析・考察し、次のような点が明らかになった。 1. ウィードはGHQ上層部の意図を超えて日米女性たちの連帯を形成し、婦人解放を推進した。 2. 婦人少年局は、そのモデルとなったアメリカの婦人局の目的とする働く女性の地位の向上だけでなく、当時の日本の実情や婦人指導者たちの意見が反映され、一般女性の地域の向上をもめざす、より広い機能を持った機関として設置された。 3. 女性労働保護に関しては、女性の政治的社会的地位の向上を重視するウィードと、女性の労働条件の改善を重視するG.スタンダー(労働課)との対立があった。 当初の研究実施計画のうち、ウィードの在米個人資料が入手できなかったため、女性の連帯活動における彼女の思想的裏付けは詳細にわたっては不可能であった。将来の研究において、この不明の部分を解明したい。
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