研究概要 |
本研究の目的はマルチセンターの形成・成長過程を動学的に分析し,都市内土地利用,都市規模,地価がどのように変化していくのかを明らかにすることである。理論モデルとして同質の線型都市を前提として,CBD,サブセンターそれぞれの中心の立地点が定められている下で,新規立地の企業と家計の立地点を計画期間にわたる都市内総地代収入を最大にする観点から決定するモデルを設定した。分析の結果,サブセンターの形成過程については,2つの交替的パターンがあることが分った。一つは前半のステージでは企業はCBDのみに立地し、後半ではCBD,サブセンター共に拡大するパターンである。第2のパターンは,前半はCBDのみに立地し、後半ではサブセンターのみに立地するパターンである。これらのパターンが実現するための条件を明らかにするために数値シミュレーション分析がなされた。一般に動学的パターンは,企業間のコミュニケーションコスト,家計の通勤のための交通費用,サブセンターの中心の位置等に依存するが,交通費が高い程サブセンターが形成され易く,コミュニケーションコストが大きい程CBDが拡大する。勿論,サブセンターの中心の位置がCBDより遠い程サブセンターの形成のスピードは遅い。さらに本モデルの適用によってサブセンターの基盤整備がなされず,モノセンターのまま都市が成長する場合と,基盤整備がなされマルチセンターが形成される場合の都市内地代総額を比較できる。この差がサブセンターの基盤整備効果と確〓でき,それ故それが実際の整備費用を上まわるならばその事業を行なう価値があることを意味する。また本モデルの利用によってサブセンターの中心の最適な立地点を決定することもできる。
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