(1)本研究においては、分析の対象国として、日本およびアジア・ニーズの韓国、アセアンのタイをとりあげ、各国におけるマクロ計量モデルのサーベイ、モデル構築の主体、目的、モデル構成の特徴に焦点をあわせて行なった。日本モデルについては、個別モデルの乗数効果の比較をおこない、モデル間での異同の要因を検討した。韓国モデルについては、標準的なモデルを再推定して、政策効果と外的ショックに関するシミュレーションを行った。 (2)日本のマクロモデルは、ほとんどが標準的なIS-LM曲線を内在し、財市場や労働市場について少なくとも短期では、不均衝アプローチをとっているが、個別モデルの動学的性質は、推定期間の違いのほかに、所得・支出面での統計的不突合の扱い、供給サイド・金融セクターの定式化、期待変数の定式化の違いに依存する。石油危機以降の公共投資乗数の低下は、需要面での感応度の低下とともに、金融面と実物面のフィードバックがモデル化されていること、統計的不突合が内生化され、所得の洩れが起こっていることによることが明らかになった。 (3)韓国では、80年代に入って、7つのモデルが中央銀行や政府と民間のシンクタンクで開発されており、海外経済要因の国内経済への影響とともに、韓国の財閥経済体制を支えてきた政府統制型の金融政造のメカニズムを、モデル化の特徴としている。シミュレーション分析で、金融変数が消費と投資を通じてマクロ経済に大きな影響を与えていること、日本と比べ、輸出の価格弾力性が大きいために為替レートの変動のマクロ経済への効果も大きいことが明らかになった。 (4)タイ国の場合は、モデル開発の試みがまだ少なく、その中心は中央銀行や政府機関であり、経済政策や5カ年計画の作成のために用いられている。モデルの動学的性質の検討は現在進行中である。
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