研究概要 |
平成4,5年度の2年間,研究補助金を受けて上記研究課題につき行った研究の成果は成果報告書を作成,報告しているが,こゝにその概要をまとめておく。説明は2部A,Bに分けて行う。 A.多変量解析に関するもの:楕円型母集団の場合における標本論の基礎となる部分の成果を得た。キーとなる点は,正規の場合と異って,標本平均と標本共分散行列が独立でないことから生ずる困難を克服することであった。これより標本共分散行列の関数の極限分布を得る公式,その期待値に対する漸近展開を得る公式を導出すると共に,具体的な例題も幾つか示した。この成果を基に種々の発展が見込まれてきて,多重比較の問題に対する新しい光が見えてきた。研究代表者の研究室から育った若い学究達は精力的に研究を進めており,すでにいくつかの知見を得ている。次に正規の場合であるが,T^2_<max>-型統計量の上方%点を評価するため修正第2近似法を開発し,公式も用意された。この近似法の精度に対する検討を,多次元範囲,また他の処理を比較すべき対照処理がある場合の統計量の2つに対し,大規模なモンテカルロ実験により詳細に行った。さらに近似法が実用的に有効であるパラメーターの範囲に対しても知見を与えた。T^2_<max>-型統計量は母平均ベクトルに対する多数比較(同時検定,同時信頼区間)のための基礎統計量である。 B.実験計画・分散分散の基礎モデルに関するもの:一般化線形モデルX〜N_p(R_x1_p+μ,Σ)の誤差項の共分散行列Σがある種の特殊構造を持つ場合,この構造を反映したΣの直和分解を行い,これに基づいてμの成分が総て等しいというoverallの仮説を多重の対比の形に分解し,対応するF-統計量を定義した。Split Plot Design,観測値がrepeated observation,Cyclic Random Vectorの場合を具体的に論じて結果を与えた。たゞしこの場合数学的に得られた仮説の実際的意味づけの検討が必要である。
|