税務行政の実態を分析することは、税制・租税政策の実施にあたってきわめて重要である。税務行政は各国で、その形態、実施状況はバラバラであり、一般に効率か公平かという視点から分析の対象になりうる。 源泉徴収制度がきわめて発達している日本において、徴税コストは節約され、きわめて効率的に税率を挙げえる余地がある。しかしこの反面、申告納税とのギャップが大きくなり、納税者の間で差別意識もしくは税に対する公平感のバラツキがでてくる。これがクロヨンといわれる業種間の所得把握の割合で示される現象である。 本研究において、日本徴税制度の90%以上が源泉徴収制度に負っていることを数量的にたしかめた。その上、カナダ、イギリス、アメリカの3ケ国の徴税コストと比較して、日本の特徴を明らかにした。源泉徴収制度が発達しすぎると、税務行政上、効率と公平の間でトレード・オフが生じる。これを日本の実態にそくして考察した。 具体的には、クロヨンの再推計をすることでこの点を追求した。前推計は1972-79年の間であったが、今回1989年まで延長、クロヨンの実態が著しく改善されているのを発見した。この背後の原因をもっと追求する必要がある。
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