本研究では、地域の差異が仕事やキャリアに与える影響について考察せんとしたが、何分研究に時間的余裕がなかったため、当初の予定を少し変えて出来る所から順番に手をつけて、順番に範囲を拡げてゆく方法を採った。 まず、(1)短大生調査において、全国2800名余の短大生を対象に、就職と地域移動に対するイメージを調査した。その結果、まず仕事を行う能力と、地域移動の経験は、職務の移動(ジョブ・ローテーション)や会社の移動(転職を含む)以上に能力に影響すると感じていることがわかった。しかし、自らすすんで地域を移動して仕事をしようという意欲には欠ける事がわかった。他の質問との関係から、地域には地域ごとに「コンテクスト」とも言うべき人間関係パターンが存在し、そのコンテクストの変更は、生活そのもののパターン変化につながると意識し、コンテクストの改変を恐がるのではないか、との仮説を立てる事ができた。(この事に関しては、共著の論文で、詳しく編じた。) つづいて、(2)大学生調査では、短大生の場合圧倒的に女子が多いためこのような事が起ったと考えていたが、男子の場合も総じて同じ傾向があることがわかった。また、コンテクストの改変をこわがらない事と、地域移動の経験は、明らかに関係があることが統計的に導き出された。 このようなfactfindingをふまえて、現在(3)短大・大学卒業生(入社後主に3〜5年の者)の調査を行ない、集計中である。 今後、このような若手のむしろエリート・サラリーマンと、予定している(4)パート・タイマーの調査を比較し、地域移動の職業的キャリアに与える影響を明らかにして行きたい。 いづれにしても、「転勤」を単に社会病理としてとらえるだけでは、問題は解決されない、という点が少しづつ明らかになり始めている。
|