本年度は、ヨーロッパ共同体域内の銀行会計基準の調和化に関して、ドイツ国内法への変換のプロセスを中心にした研究を進めた。ヨーロッパ共同体銀行指令へのドイツ銀行会計法の適応は、商法関連法令の改正を以て第2の段階に入った。すでにドイツ銀行会計法は、ヨーロッパ共同体第4次及び第7次指令を変換して成立した1985年商法典第3編にその一部がフォーミュレートされているが、今般の商法関連法令として新設された銀行会計諸規定によって一層具体的な規準が示された。それは、1986年12月8日に共同体理事会が加盟国に発した銀行会計指令をドイツ国内法に変換させたもので、1991年1月1日発効の銀行会計指令法が商法典第340条以下に挿入されるとともに、授権規定にもとづき、より詳細な勘定科目や決算書シェーマに関する銀行会計命令が1992年2月10日に発せられた。本年度の研究においては、ドイツ銀行会計指令法が商法典第3編4章の「信用機関に関する補完規定」として体系的に成立した点に着目し、そのことが商法型会計制度を採るこの国の特徴であることを明らかにした上で、今回の法改正の特色をつぎの点に求めることができた。 ・EC金融統合に伴うヨーロッパの銀行取引領域の拡張に対応させた会計規準の改訂が求められ、これに応える形で発せられたEC銀行会計指令のドイツ国内法変換によって、ドイツのユニバーサルバンクのグローバルな世界戦略に制度的な根拠が付与された。 ・EC及びドイツの銀行会計関連法令の整備によって、会計的な認識領域の拡大に対応できる会計規準が形成されるとともに、自己資本比率の是正やリスク認識の損金処理に関するメルクマールが明確化された。 以上の研究経過を踏まえて、その成果を雑誌「産業経理」誌(1993年4月号、産業経理協会)に発表することとなった。
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