研究概要 |
米国の会計基準設定主体である財務会計基準審議会(FASB)は,金融商品のリスク情報開示に関する2つの基準書を公表している。基準書105号「オフ・バランスシイート・リスクを伴う金融商品及び信用リスクの集中を伴う金融商品についての情報の開示」及び基準書107号「金融商品の公正価値の開示」である。前者は金融商品のうち,オフ・バランスシート・リスクを伴うもの及び信用リスクの集中を伴うものを開示することを要求するものであり,後者は金融商品全般について公正価値情報の開示を要求する。米国の銀行業を中心とする実態調査によると,オフ・バランスシート・リスクとして金利スワップ,通貨先渡し,通貨先物,通貨オプション,ローン・コミットメント,スタンドバイ・クレジット等が比較的多くあげられていた。また信用リスクの集中の例としては,地域別の信用リスクの集中が最も多くみられた。 金融商品の公正価値の開示については,その適用金融商品の範囲の広さには注目すべきであるが,わが国の実態と比較してみると,興味ある対比がある。すなわち,日本の場合には公正価値に相当する時価情報の開示は,先物取引,オプション取引及び有価証券についてのみ要求されているが,その種類別に具体的な開示が行われているのに対し,米国の場合は開示の範囲は広いが,個々の金融商品についての開示内容は乏しく,米国においては,公正価値の開示についてその内容の一層の充実が求められるべきであると思われる。 複合金融商品については,日米ともほとんど開示がなされていないことに問題があるとの結論に達した。
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