研究概要 |
本研究では,周期ポテンシャルを持つ一次元シュレディンガー方程式に外場として電場を加えた場合に,伝導状態にあった電子を表わす波動関数がどのように変化するかという摂動問題を複素解析の立場から研究してきた。 この問題のスペクトル構造に注目すると,このような周期ポテンシャルを持つシュレディンガー方程式にほんの少しでも摂動項を加えると禁止帯が消えてしまい,その結果バンド構造が全くなくなってしまう。しかし物性論的には非常に弱い電場を加えただけでその物質のバンド構造があとかたもなく消えてしまうということはみとめられない。このことからもわかるように,我々の扱っている摂動問題は,数学的にはいわゆる特異摂動問題であり,十分注意しながら通切な方法にもとづいて解析をおこなう必要がある。この点においてBuslaeuらが導入したMnltiple scrles法にもとづいた漸近解析は非常にすぐれたものであることが判明した。 複素解析をBuelaeuらの仕事に基づいた我々の研究の結果,有限帯ボテンシャルを持つLam′e方程式の場合には複素の結晶運動量とエネルギーの間に成りたつdispersion relationが具体的に求まりその結果 さまざまな計算が実行できることがわかった。たとえば Lam′e方程式に電場による摂動を加えるともともとのBloch解にはない新らしい位相因子(Berry phase)が生じるが,この位相因子もσ-函数,ξ-函数やδ-函数を使って表現できる。 Multiple scrale法を Stark-Wammies Ladder resonance問題に適用する為には いくつかの数学的問題にとりくまなければならないことも判明した。
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