研究概要 |
私のこの2年間の研究は,楕円モジュラスを持つHeine超幾何関数の背後にある数学的メカニズムを探索し,その一般化を行うこと,そこから生ずる基本的問題を提起して,幾つかを解決すること,また統計物理への応用をも与えることであった。 n次元代数的トーラスX上のb-関数及び乗法関数Fを設定して,代数的de Rhamコホモロジー H^*(X,F,V)を考察する。我々の最初の問題は,(1)H^*(X,F,V)の有限性であって,又その次元を決定することであったが,これに対しての部分的解決は,私とC.Sabbahによって与えられた。(2)次に,Xの点ξを節点とするn次元格子上の和であるFのn次元Jackson積分を考察し,さまざまなξに対して,Jackson積分の間の関係を問題にした。これは接続問題と呼ばれる。 特に,FをA型ルート系に付隨する乗法関数にとるとき,この接続問題をといた。すなわち,H^n(X,F,V)の次元をkとするとき,k個の点ξ_1,ξ_2,…,ξ_mが存在して,すべてのξに対して,これらk個のJackson積分は,楕円テータ有理関数を係数として,互いに線形従属する。我々は,この陽の公式を与えた。さらに,Fが対称のときは,この公式自体が対称な形をもつ。この方法によって,Yang-Baxter方程式の新しい解が求められる。 もっと一般の状況で,この問題を取り扱うために,接続公式のより一般な表示を与えることをいま研究しはじめている。 私の成果の大部分は,加藤芳文氏(名城大)との共同研究による。なほ,寺尾宏,P.Orlik両氏(Wisconsin大),喜多通武氏(金沢大)とはツイストde Rhamコホモロジーの研究を行なった。鈴木増雄(東大)氏の指数積公式を拡張することも実行した。
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