研究概要 |
飛田・櫃田の著書「ガウス過程」で展開された理論の発展を意図して、与えられた共分散関数P(t,s)をもつガウス過程X(t)の時間発展を、標準表現と確率伊藤=ヴォルテラ方程式の両形式で記述すること、とりわけ通常の伊藤型確率微分方程式の形をとらず、より一般なレヴィの確率変分方程式を必要とするような過程を扱うことが目標である。我々の理論の中で多重マルコフ過程の占める重要性に鑑みて、多重マルコフ過程列X_m(t)の極限として得られるX(t)に焦点をあわせて研究する。中でもフラクショナル・ブラウン運動B_H(t)(その定常増分の分散はφ(|t-sD)=|t-s|^<2H>)とその仲間達に興味をもち、種々の観点から自己相似性を有するこれらの過程を研究した。まず0<H<1/2の場合、近似のφ_m(t)=2Σ^^m__<i=1>ci(1-e^<-λidt1>)/λi(λi,Ci>0)に対応する定常増分過程X_m(t)は、鏡映正値性をもつ(m+1)重マルコフ過程で、その確率伊藤=ヴォルテラ方程式の具体形を確立し、大学紀要に発表した。又B_H(t)を偶部分M_O(t)と奇部分M_1(t)に分解して、パラメータ変換で定常過程X_<O(1)>(t)=e-2Ht_MO(1)(e2t)に移ると、P(t,s)=∫^<60>_0e_<+λ|t-s|>dδ(λ)の形となり鏡映正値性をもつことになって、岡部・井上に負うKMOーランジュヴァン方程式論におさまる。他方、1/2<H<1の場合には、符号付き測度δの形が生じ、この種の定常過程への拡張が重要問題として浮かびあがる。一次微分D_1をとって超過程D_1B_H(t)を考えれば、KMOーランジュヴァン方程式論を有効に適用できることが井上によって解明された。上記とは異なるアプローチとして、フラクショナル解析の利用が自然に浮かぶ;0<H<1に対し、非整状の微分D_α(α=H-1/2)を施すと、D_αM_0(t)等のガウス過程は伊藤型の確率微分方程式を許容することが示される。ここでふれた研究成果の詳細は、フラクショナル・ブラウン運動の多次元パラメータ化の研究ともあわせて、近い将来発表する計画である。
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