本研究において、我々は、2つの種類の数理生物学に現われるモデル方程式を取り上げ、数値的、数理的に考察して以上の結果を得た。 1、伝染病の流行を記述する2成分反応拡散系 空間的分布をも考慮したKermack and Mckendicモデルは伝染病の伝播モデルであり、感染者と非感染者の人口密度を未知関数とする2成分反応拡散方程式系で表される。解伝染病の一定の速度で伝わる状態を表す解である進行波解の存在とその速度cについて、(1)感染者の拡散係数d_1が0でない場合、十分大きい速度の進行波解の存在をベクトル場を考察することにより証明し、数値実験から非感染者の拡散係数d_2=1.0と固定してd_1を変えると病気の伝わる速度は、およそd_1の1/2乗に比例し、またd_1=1.0と固定してd_2を変えるとその時は速度はほとんど変わらず一定であることが示された。(2)d_1が0の場合については、その進行波解がすベてのc>0に対して存在することをWazewskiの定理に基づいて証明した。この場合、d_2=1.0と固定すると、病気の伝播速度は、初期値の無限遠での減衰の速さに依存していることが数値的に示された。これからの課題は、以上の数値実験結果を解析的に明らかにすることである。 2、植物性プランクトンの垂直分布を記述する微分積分方程式 E Beneta and Fasanoは試験管中での単一種の植物性プランクトンの空間分布の時間的変化を植物性プランクトンの密度を未知数とする微分積分方程式を与えた。我々は、そのもっとも簡単な場合に、恒等的にゼロである定常解と正値非定数定常解に対して微小摂動に対する指数安定性をH^2ノルムとC^0ノルムの両方で示した。
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