研究概要 |
ブラックホールのまわりに形成される降着円盤の平衡形状はブラックホールの質量M、物質降着率M、および粘性係数αの値によって決定されるが、それぞれに関して、M=10〜10^9M_<(] SY.sun. [)>,M=1〜100 M_<(] SY.sun. [)>/yr,α=10^<-3>〜10^<-10>という広い範囲にわたって平衡モデルを作り、円盤内部の物理状態を求めることができた。 中性子・陽子からクリプトンに至るまでの471種類の元素を含む核反応ネットワークを用いて、円盤内部で進行する熱核反応を詳しく調べ、円盤内で合成される元素量を数値計算した結果以下のことが判明した。 1.銀河中心核におけるブラックホールのように質量が10^5M_<(] SY.sun. [)>以上の場合には、最高温度が10^8Kに達することがなく、核反応も水素燃焼までで、ヘリウム燃焼には至らない。従って、初期組成としてビッグバン組成を考えると、軽元素はすべて水素とヘリウムに帰着してしまう。一方、質量が10M_<(] SY.sun. [)>の場合には、円盤内部が十分高温になり、αの値を小さく取れば、鉄、ニッケルなどの元素までが合成される。 2.水素燃焼領域で放出される核エネルギーは重力エネルギーの解放に比べて小さく、円盤の熱的不安定性への寄与は線形近似の枠内で議論できる。このとき、円盤中心付近においては4つのモードのうち1つのモードだけが不安定になり、その成長時間は数ミリ秒で、X線バーストに特徴的な時間と一致する。 3.ヘリウム燃焼領域においては、核反応率がかなり高くなっているため、不安定性の線形近似がもはや成り立たず、核反応によるエネルギー放出を降着円盤の平衡モデルに組み込むことが必要になる。このことは今後の重要な研究課題であり、早急に着手したいと考えている。 さらに、自己重力を伴った降着円盤への適用も計画している。
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