研究概要 |
この研究では超新星爆発による中性子星の形成問題や誕生時の中性子星の特質等を調べる上で基礎的物理量となる高密度超新星物質の熱力学諸量や状態方程式の現実的な結果を提供すること,また,これに基づき生まれたばかりの熱い中性子星が通常の「冷たい」中性子星とどう異なりどんな現象が期待できるかを論ずること,を目的とした。さらに,最近話題になっている不安定核の物理と関連して超新星物質中の中性子過剰核物質の性質を研究する事も目的に加えた。ほぼ当初の目標を達成し、独自性のある問題提起と方法の提案をなし得たものと考えている。 (1)有限温度の核物質をとり扱う上で「有効核力を用いた有限温度のハートリー・フォック方程式系を触く方法」を提案し,この方法の正当性と実行可能性を示した。有効核力を現実的2核子ポテンシャルに基づく部分と現象論的な部分に分ける「分離の方法」が現在の理論上の不定性が結果にどう影響するかを知る上で有効である事を強調した。 (2)高密度超新星物質の勢力学諸量をTableにまとると共に、成分比が殆んど一定,陽子混在度が大きい,状態方程式はかたくなる,といった特質を見出し,同時にそれらの理由を明解に説明した。陽子混在度Ypに対し,Yp=2/3Ye+0.05(Yeはレプトン比)という経験式を提案した。 (3)中性子過剰核物質の熱力学諸量や1粒子的諸量が密度〓,温度T,非対称度αにどう依存するかを系統的に調べた。また、物質の非圧縮率のT,α依存性を論じ,気相液相転移のα依存性を初めて明らかにした。 (4)誕生時の熱い中性子星は「太っている」こと,冷却・収縮に伴って自転の速まりとエネルギー放出が起ることを指摘しその程度を評価すると共に,エネルギー放出とSN1987Aの観測結果との関連を論じた。また,中性子星の限界質量や最高速回転を論ずる上で誕生時の熱い時代を考慮する事が非常に重要であることを強調した。
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