研究概要 |
重イオン反応によって生成されるベータ放射性ヘリウム,リシウム,ホウ素などの同位体の高速イオンを放射線核ビームとして収束させて,パルス的に超流動液体ヘリウム中に導入した.大部分のイオンは中性原子となり,また,イオンのまま残ったものは氷球粒子となって,それらの空間分布は時間とともに変化する.半導体アルファ線ベータ線検出器と位置敏感型ベータ線検出器によって放射性原子の同定と,それらの空間分布の時間的変化を追跡した.空間分布の振舞いを色々の条件のもとで調べ,極低温における超流動ヘリウムとこれらの不純物原子との相互作用および超流動ヘリウムにおけるボーズ凝縮の様子を研究した. 超流動ヘリウム中において作動するイオン打込み型半導体検出器をベータ線,アルファ線検出用として,既存のクライオスタットに組み込んだ.液体ヘリウム中に導入した不純物原子の相互作用の研究は,本研究班の開発した液体ヘリウム中の氷球粒子に関する検出法,アルファ線,ベータ線検出法を発展させることによって可能となった.これらの検出法は液体ヘリウム中の放射性不純物イオンの検出には極めて有効な検出方法で,従来の値を大きく上まわる検出効率を得た.また,放射性核からのベータ線をクライオスタットの外部で検出する方法の開発を行い,薄膜窓つきのクライオスタットが完成した. 大阪大学核物理研究センターのリングサイクロトロンからの重イオン線をENコースに導き放射性核ビームを生成した.^8Li,^<12>B核を用いて中性原子,イオンの超流動ヘリウム中での挙動が明らかになった.また,世界に先駆けて氷球粒子中で核偏極が保持されることを確立した.これによって核物理,低温物理,クラスターなど凝縮系の物理等多くの分野における新しい研究の大きな第一歩となった.
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