研究概要 |
1.ニュートリノなどを用いた核内弱核子流の構造の研究を特に重陽子とA=12の核において行い,下記のような顕著な結果を得た。 2.重陽子のミュー粒子原子核における2つの超微細構造状態が,ミュー粒子を捕獲しニュートリノを放出する反応において,捕獲率が誘導ギスカラー項の強度に著しく依存すること,しかも交換流の詳細に殆んど依存しないことを証明した。 3.平成5年に阪大理において^<12>B,^<12>Nのベータ線角分布が新しく測られデータが渡された。これを代表者の理論に基き理論解析した結果,誘導テンソル結合定数に対し,世界ではじめて,有限なしかしごく小さい値が得られた。f_T/f_A=(0.21±0.14)/2Mとなる。 4.同様にして,アクシアルベクトル主要項の時間成分の,厳密な値を得た。y=5.10±0.16となる。 5.上記の量は,^<12>Cのミュー粒子捕獲より誘導ギスカラー項の結合定数を決定するための重要な要素となる。代表者の理論に基いた公式による理論解析を行い,新しい値が得られた。g_P/g_A=7.3±1.3。この値はPCAC仮説を決定するもっとも有力な証明である。また核内核子流の再規格化の原因が,核子多体効果ならびに交換流効果によるものとして,完全に理解できることを証明した数少ない例として高く評価されている。 6.以上の結果は,この2年間,5回の国際会議で招待講演として発表され,6個の論文として出版される。 7.yの値に関連した核構造模型の精密化が進められている。またミュー粒子捕獲の多様な核種についての系統的研究や,ベータ崩壊の諸現象についての,標準模型以上の相互作用に基く公式作成の依頼が欧米の研究者より要請されている。
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