研究概要 |
「陽光」衛星で1991年に観測された10月27日,11月15日および12月3日の太陽フレアのX線・γ線スペクトルの詳細な解析から,下記の点が明らかにされた。10月27日のフレアでは,電子の制動放射と同時に陽子の核反応による多数のラインγ線が1-7MeVに見られ,電子がMeV以上に,また陽子が10MeV以上に加速された。しかし制動放射とラインγ線強度の時間変化を比較すると,電子と陽子とは同時に同じ割合で加速されているのではなく,複雑な加速過程によって両粒子が高エネルギー化されている。一方12月3日のフレアでは強い制動放射のスペクトルが,10MeVまで観測されているが,ラインγ線は見られない。これは,電子が選択的に加速された結果によるものと考えられる。さらにスペクトルの時間変化から,電子は低エネルギーから高エネルギーに至るまで同時に加速されたことがわかり,効率のよい電子加速のメカニズムが考えられる。11月15日のフレアでは,フレアのピーク時に陽電子が生成され,電子と対消滅をおこし511KeVラインが放射された。その時間変化の解析から陽電子は,^<16>O^*(6.025MeV)からの電子対放射および^<31>S,^<29>P,^<27>Siなどの陽電子崩壊核からつくられ,10^<16>cm^<-3>の光球上層と10^<12>-10^<13>cm^<-3>のコロナ中で同時に電子と対消滅をおこしたと推定される。またこのフレアではHe+He反応でつくられる^7Be^*および^7Li^*から放射される429と478KeVのラインγ線が観測された。ラインスペクトルの解析から加速粒子は,ほゞ磁力線に沿って光球に落下したものと考えられる。 このように本研究は,「陽光」の高感度X線・γ線スペクトル計の観測から,太陽フレア時においてこれまでに明らかにされていなかった粒子加速度過程に関する新たな知見が得られた。
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