研究概要 |
層間化合物AxTiS_2(A=遷移金属,銀,アルカリ金属)と三元金属間化合物Mn_2Sb,Mn_3GaC,Fe_7Se_8の電子帯構造および全エネルギーを、自己無撞着LAPW法を用いて計算し、以下に示す結果ならびに知見を得た。 1.AxTiS_2(A=遷移金属,銀,アルカリ金属) ゲスト原子が銀の場合には、銀と母体の電子状態は良く混成するが、凝集エネルギーの利得は少なく、母体との結合は遷移金属の場合と比べて弱い。一方、アルカリ金属の場合には、価電子を介した母体との結合はほとんど見られず、電子を母体に供給する働きしかもたない。また、全エネルギーの比較から、遷移金属の場合にはABC積層構造が、銀の場合にはAB積層構造が、より安定であることを定量的に確かめた。 2.三元金属間化合物Mn_2Sb,Mn_3GaC,Fe_7Se_8 (1)Mn_2Sb:フェリ磁性および反強磁性相における全エネルギーを格子定数a,cの関数として計算し、フェリ磁性相が最も安定であることを確かめた。また、線圧縮率はα軸方向の値がc軸方向より大きく異方的である。 (2)Mn_3GaC:強磁性および反強磁性相における電子帯構造を体積の関数として計算し、磁気モーメントの大きさならびにその体積依存性ともに反強磁性相の方が強磁性相に比べ大きな値をとることを見いだした。また、体積の大きな領域で反強磁性相がより安定化することが理論的に確かめられた。 (3)Fe_7Se_8:フェリ磁性相における電子帯構造の計算から、対称性の異なる3種類の鉄サイトでの磁気モーメントの大きさに顕著な差異がないことを確かめた。また、得られた状態密度から計算した光電子スペクトルならびに光学電気伝導率ともに実験と良い対応を示す。
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