研究概要 |
Fe-Ni,Fe-Pt,Fe-PdのFeを中心とした3つの代表的なインバー合金について,格子の微細な構造を調べるためにX線散漫散乱の測定を行ってきた.Fe-Ptインバー合金については室温から20K以下の低温までの温度範囲で散漫散乱に異常は見られなかった.しかし,Fe-Pdのインバー合金について低温で円盤状の散漫散乱が見られた.さらにFe-Niインバー合金について200-ブラッグピークのまわりで〔011〕方向に伸びたストリーク状の異常な散漫散乱が低温でのみ観測された.これは試料中の一部に組成のゆらぎのFe濃度の高い部分があり,その部分で低温でfccからbcc相へのマルテンサイト変態がおこる直前の状態が実現し,微小なfe原子の移動が110-面内でシア-状に起こり,これが,fe-Ni合金の持つ大きい正の磁気体積効果を通じて面ひずみを与えているとして説明された.この場合,Fe原子の移動は非常に小さく,これまでに他の方法では全く見つかっていなかったものであり,Fe原子の大きい磁気体積効果と,X線散漫散乱の技術によりはじめて観測されたと解釈される.Fe原子の持つ大きい磁気体積効果は3d電子の強磁性バンドを考慮したモデルで説明された. さらにFeを中心とするアモルファス強磁性合金についてイオンビーム照射を行い,透磁率の増加や保磁力の減少などの軟磁気特性の改善が照射の初期段階で見られた.これはやはりFe原子の大きい磁気体積効果を通じて,格子間原子と同様の歪を与え,これが本来の磁気異方性を打ち消すためとして説明された. さらに高圧下での磁気測定の結果から,格子間原子と同じような配置を作った場合にも大きな磁気体積効果が観測された.このような結果も3dバンド電子の強磁性モデルで説明された.
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