研究概要 |
本研究では、遍歴電子強磁性体に構成元素以外の不純物元素を置換導入したばあいに、どの様な効果が現れるかを主として実験的に調べた。実験対象とした磁性体は、弱い遍歴電子強磁性体であるZrZn_2,YNi_3,Y_2Ni_7に(a)局在磁気モーメントをもつGdを導入したものと(b)遷移金属元素を導入したもの、遍歴電子強磁性を示す化合物(c)CoS_2のSをセレンで置換したもの、秩序合金として規則格子を作ったとき強磁性をしめす(d)Au_4MnのMnをCrで置換したものである。これらの試料について、強磁場磁化測定を主とした実験をおこなった。(a)局在モーメントを導入したばあいには、局在モーメントによって母体に誘起される磁化を遍歴電子に特徴的な応答として平均場近似で扱うことで、磁化の温度依存性を理解できるが、磁場依存性にかんしては平均場近似では不十分で、磁気モーメントのゆらぎの磁場による抑制、方向性を考慮にいれる必要がある。(b)遷移金属元素を導入したばあいには、フェルミ準位のシフトによる変化だけでなくエネルギーバンド構造への影響によると考えられる磁化の変化が見られた。(c)Cos_2のSをセレンで置換したばあいには強磁性体からメタ磁性体への変化が見られる。非常に一様性の良い試料の作成に成功した結果、Se10%の試料で温度の上昇による強磁性からメタ磁性への1次転移、さらに常磁性への2次転移が明瞭に観測された。この転移は、スピンのゆらぎを考慮にいれた、ランダウの相転移理論によって定性的には説明することができた。(d)秩序合金Au_4(Mn,Cr)のCr置換にともなうキュリー温度の変化を明らかにした。結晶のサイズが小さくなったとき、結晶内部に広がった遍歴電子の状態に影響が及ぶことが予想される。この効果についての実験をおこなったが顕著な変化は見出されなかった。
|