1。カノニカル平均による軌道反磁性の計算 メソスコピックな2次元電子系では大きな揺らぎを伴う軌道反磁性が現れることが理論的に明らかにされてきた。ところで、従来の研究では、この揺らぎを計算するのにグランドカノニカル平均が用いられてきた。一方2重連結試料での永久電流の計算では、不純物平均をとる際にグランドカノニカル平均を用いるかカノニカル平均を用いるかで大きな違いを生ずることが明らかにされてきた。そこで本研究では有限温度での軌道反磁性の研究において、カノニカル平均による計算を行い、従来のグランドカノニカル平均の結果との比較を行った。その結果、(1)軌道磁化は温度が上昇するにつれ揺らぎが小さくなりランダウの反磁性に落ち着くが、この揺らぎがおさまった温度領域ではこの二つの平均方法による違いはなく、どちらでもランダウ反磁性が実現される。(2)より低温側の揺らぎが大きい領域では、カノニカル平均の方が大きな揺らぎを与えるが、違いは典型的な場合では1.2倍程度であり、それほど大きな違いではない。以上のことを明らかにすることができた。 2。メソスコピックな細線における電子間相互作用の効果 上記の研究には電子間のクーロン相互作用は考慮されていないが、現実の系との比較ではこれは必ずしも無視できない。そこで、まず強磁場領域での相互作用の効果を調べ、基底状態の相図を得た。今後磁化、永久電流の計算を進める予定である。 3。中間磁場下の2重量子井戸での集団励起 強磁場下の2次元電子系は最低ランダウ準位のみを考えればよいという利点があるが、現実の系では、この近似は妥当ではない。そのような場合の相互作用する電子系の性質を明らかにするため、中間磁場領域の電子系の集団励起を計算し、強磁場極限との違いを明らかにした。
|