研究概要 |
1.従来、超伝導臨界温度(Tc)付近においてGinzburg-Landau理論は非常に重要な役割をはたしてきた。本研究では、自由エネルギーを電子場に関する汎関数行列式の形に書き、そこでSchwingerパラメタを導入し、さらにこのパラメタによる展開を行なった。その結果、Ginzburg-Landau領域をこえる低温において、自由エネルギーのオーダー・パラメタによる展開を得た。これは、Ginzburg-Landau自由エネルギーの一般化になっており、実際、最低次の展開では、Ginzburg-Landau自由エネルギーを正確に再現する。またこの自由エネルギーは、Tc付近では無視される束縛状態の寄与をも正しく考慮している。この自由エネルギーを用いて、我々は低温における渦糸の構造を決定した。その結果従来のGinzburg-Landau理論の予測とことなり、低温でコアー・サイズは減少するという結果を得た。 2.Waxman,Williamsはポリアセチレンのソリトンにおいて、ソリトンの幅λがコヒーレンス長に比べ小さいとき、λlnλに比例する項がソリトンのエネルギーに現れることを示したが、本研究ではこの結果から、フェルミ場に対するポテンシャルを調和近似し、その結果えられた自由エネルギーの展開が厳密解を非常によく再現することを見出した。現在このポリアセチレンの結果を、超伝導渦糸に応用している。 3.汎関数行列式を求める上で、Fredholm行列式の手法は大変有効である。我々は、1+1次元系におけるFredholm行列式の一般論を研究する過程で、1次元量子力学の境界値問題にかんし、全く新しい解法を発見した。これは、そもそもDirac場のFredholm行列式に関するものであったが、Schrodinger波動関数と、その微分のダブレットを定義することによって、Schrodinger場にも用いるようにした。その結果、本来無限次元の行列式であるFredholm行列式が2×2の行列式で表されるという予想をたてた。現在その証明を試みているが、環状分子の電子スペクトルへの応用などはすでに行なっている(Nakahara,Waxman準備中)。
|