研究課題/領域番号 |
04640366
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物性一般
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
八尾 誠 京都大学, 理学部, 助教授 (70182293)
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研究分担者 |
小貫 明 京都大学, 理学部, 教授 (90112284)
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研究期間 (年度) |
1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1992年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 水銀 / 臨界現象 / 熱電能 / クラスター / 励起子相 / 金属-非金属転移 / 輸送現象 / 伝導性流体 |
研究概要 |
液体水銀は、融点直上の密度13.6g/cm^3では金属であるが、液体-気体臨界点(温度1478℃、圧力1670bar、密度5.8g/cm^3近傍では非金属的である。1972年にDuckersとRossが、臨界点近傍で液体水銀の熱電能が大きな負の値からゼロに急激に変化することを報告し、その後、いくつかのグループにより熱電能測定が試みられたが、結果は測定ごとに異なっていた。我々は、この原因が測定セルの構造にあると考え、新しいセルを考案して熱電能の測定を行った。その結果、臨界圧力に近い1680barにおいて、1480℃近傍の温度で-200μV/Kから-3000μV/Kに近い大きな値へと急激な変化を示した。 また、温度・圧力を変化させて臨界点から遠ざかるとき、このよな異常な振舞は速やかに消失した。 即ち、この熱電能異常が臨界点の存在と密接に関わっていることが判明した。一方、熱電能異常が見られる密度域で、誘電率がClausius-Mosotti則から大きくずれることが実験的に知られ、理論的には励起子凝縮相の出現が示唆されている。光吸収スペクトル等の結果も踏まえて、我々は、臨界点近傍の流体水銀には平均十数個の原子からなる誘電クラスターが存在し、熱的に励起された電子がこの誘電クラスターと相互作用して、異常な熱を運ぶことが熱電能異常の原因ではないかと考えている。 このように臨界近傍の流体水銀では、電子運動と密度ゆらぎの相互作用が新しい現象を生み出している。単純液体の液体-気体臨界点近傍では、クラスターの集団移動が熱伝導度の増大を導くことが、これまでの研究から知られているが、伝導性流体の動的臨界現象は、理論的には全く未開の分野であり、新しい発展が期待される。
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