研究概要 |
低温用STMの作製:超微粒子の電子状態を観察するためには予想される微粒子の電子状態のレベルが数meV以下であるため,低温STMが必要である.われわれは従来の低温用クライオスタットを作製し,当研究室で開発してきた圧電体の剪断変形と,伸縮変形を利用した粗動機構を持つSTMユニットが低温で圧電体の感度低下がみられるものの使用に耐えることを確認した.この粗動機構は,円周上に圧電体を配列することにより,今までとは異なる方式の圧電体ステッピンングモーターが実現できる.試作した結果は日経産業新聞に取り上げられた. 発光現象の観察;本研究費で購入した分光系を用い,STM/STSと同時に発光の観察を行った.通常のSTSを行う1v以下の電圧では発光が観測されなかったが,1vを超える電圧で,ほぼ印加電圧に対応したエネルギーのスペクトルが微弱ながら観察された. 超微粒子のSTM/STS:超微粒子の電子状態観察のためにAlを超高真空中で蒸着し,酸素を導入して酸化膜の厚みを制御することを試みた.酸化膜の形成と共にトンネル電流が不安定となり,STM像が乱れ始め,STSを行うことが不可能となる.従って,従来報告されている単一電子トンネリングの現象観察は,超高真空中での試料作製を行っておらず,探針は試料表面に侵入しているのではないかとも考えられる.酸化条件を変えながら,超高真空中でPdを蒸着しSTM/STSを行った.しかし,現段階では,良好な微粒子を経た電流電圧特性は得られていない.従来型のクライオスタット内では,単一電子のトンネリングによると考えられる階段状の電流電圧特性が,液体窒素温度で観察されたが,われわれが目的としている微粒子の電子状態を分離するためには,超高真空中での実験を最適化することが不可欠であり,目下努力を続けている.
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