研究概要 |
レーザーのミクロな模型から出発し,一般化された位相空間の方法を用いることにより,演算子からC数空間へと移行して量子論的なフォッカー・プラング型の基本式を得た。これを原子系に対しては球関数,電磁場に対してはフーリエ級数とラゲール関数を用いて展開し,係数に対する常微分方程式を得た。この方程式の厳密な解析解を得た。以上のことは密度行列の厳密解を得たことと同等である。これよりさまざまな物理量の平均値の時間変化を決定できる。具体的な時間変化を計算し図示するという作業は,この科研費で導入されたワークステーションによって行なわれている。パラメータ等をさまざまに変化させて詳細に検討するという作業は現在進行中であり,これと並列して数篇の論文が投稿中また準備中であるが,現在までの成果の一部は速報として論文となっている。また本研究課題の副題である“強結合系の緩和現象"に関連し,かつレーザー系の“原子系"部分に対しては,より一般的な解を得ることに成功した。このことに関しては球関数展開法によるもの及び経路積分法によるものという,二つの方法論を駆使して強結合系の緩和現象の本質を明らかにした。これら二つの論文においてもワークステーションは有効に用いられ,ことに経路積分の複雑な計算を遂行する上で甚だ有用であった。 また,ごく最近大きな進展があった。光子場を正準変換により消去すると原子間の有効相互作用が導かれるが,これがワイス型のXY模型となり超伝導のBCS理論と類似の定式化が可能となる。ただ反転分在の存在のために磁性体・超伝導体とは異なる様相が生じ、これがレーザー光のコヒーレンスと深く関連することが明らかとなった。この描像に基いて多原子系に現在理論を拡張しつつあるが、原子系のコヒーレンスがコヒーレンス光を生み出す協同現象のメカニズムが解明されつつある。
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