研究概要 |
本研究は,地震の震源スペクトルの地域性を明らかにすることを目標として,地震波形の解析的・理論的研究を行なったものである.主要な研究事項として,(1)震源スペクトルの地域性の研究,および(2)地震波減衰の定量的研究の2つのテーマを設定した. 震源スペクトルに関しては,異なる地域の微小ないし小地震数10個について地震モーメントとコーナー周波数を決定し,これにもとづいて応力降下量を推定した.その結果,1984年長野県西部地震(M=6.8)の余震域と定常的な地震活動がみられる栃木県足尾地区とでは,地震の応力降下量に顕著な差異があることが明らかになった.地震波の減衰に関しては,P波とS波の減衰の比は,従来の研究結果とは異なり1よりも大きいことを明らかにした.また,高周波の帯域では,硬質岩盤でも観測点直下のサイト特性を無視し得ないことが明らかになった.われわれはさらに,本研究で得られた散乱減衰の理論的な定式化を基礎に,散乱減衰と内部減衰の分離,評価を試みた.本研究では,2次元多重等方散乱問題の解析解の定式化,P-S変換を含む多重散乱モデルの構築など,理論面でも大きな成果を収めることができた. 本研究では,山形県東根市関山に広帯域地震計を設置し,1993年北海道南西沖地震等の良好な波形記録を得ることができた.観測は今後も継続して実施する予定である.この観測データにもとづいて,本研究の成果をさらに広い周波数帯域へ発展させることができるものと期待される.
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