研究概要 |
本研究の目的は活断層の近傍で高密度のアレイ地震観測を実施することにより,断層の深部構造を詳細に調べ,断層運動の力学的メカニズムを明らかにすることであった.我々は本補助金を利用して,栃木県日光・足尾周辺域で地震の高密度アレイ観測を実施した.アレイ観測の観測点間隔は50m,観測点は3成分で40点,測線の長さは2kmである.この地域は東日本の内陸部でも最も地震活動が高い地域であり,足尾町では内の篭断層が走っている.この地域で行われた観測で,深部構造を高分解能で調べるためには,地表付近の不均質性が地震波形の及ぼす影響を取り除くことが重要であることが示された.そこで観測点間隔が10m,観測点数が80点のアレイ観測も実施した.そして,陸上エアガンを利用して浅部構造を調べた.この結果,深さ数10mの浅部構造により,振幅が大きく変化することが示された.現在,地表付近の不均質性の影響を取り除いた構造決定の解析を行いつつある. 岩手県川井村で行われた人工地震の高密度アレイ観測のデータを用いた解析も行った.観測点数は196点で,観測点間隔は25mである.この地域は1931年にM6.5の小国地震が発生している.コーダ波の到来方向をセンブランスを用いて計算したところ,コーダ波の大部分は北東方向から到来していた.早池峰構造帯の走向とコーダ波の到来方向とが一致していることから,深部では構造帯が南西方向に向かって深くなっており,小国地震の断層面はこの構造帯と南の花崗岩体との境界で発生した可能性が高いことが示された.また,深さ15km以深の地殼深部では15Hz前後の比較的短周期の波が選択的に散乱されることが示された.
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