研究概要 |
大気大循環モデル(GCM)を用いて赤道下部成層圏に存在する準2年振動(QBO)の再現を試みた.モデルは気候システム研究センターと国立環境研との共同で現在開発中のモデルである. 1年目はこれまで,GCMでQBOが再現されていないこと,及び最近重力波の方が大事であると言われているので,赤道上のみの東西-鉛直の2次元モデルで実験をおこなった. この場合は容易にQBO的な振動が再現できた.ただし2次元性と回転がないことのために成層圏で大きな重力波が生成され,そのため振動の周期が短くなってしまった. 2年目はいよいよGCMを用いてQBOの再現を試みた.これまでの経験に鑑み,またモデルの現状を考え併せて,以下に述べる方針で実行する事にした. 始めの方針ではT42で鉛直分解能1km程度と考えていた.しかしながら,ここでは別の方針でやることにした.それは水平分解能を上げるために全球と言うことを諦めて,東西方向には地球の一部(実際は1/5セクター)を取り出してT106と同じ分解能にしたことである.全球でやるべきところであるが,メモリーの都合でこのようなやり方を選んだ. その結果,QBO的な振動を再現することができた.これは世界で初めての仕事である.ただしいくつかの難点が存在している.1つはQBOの存在高度が高いことである.振動が下部成層圏にまで下降せず,上部成層圏にのみ留まり,そのぶん周期が早くなってしまった.しかしながら,将来全球を含むGCMでQBOを再現する大きな1歩を踏み出したと思う.
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