研究概要 |
さまざまな秩序度をもつ液晶相を規定している分子間相互作用を解明するために,結晶多形の構造とその液晶相への転移挙動について以下の研究を行った。 (1)初めて反強誘電性が示されたMHPOBCと略する物質について,構造および熱挙動の検討を行い,報告した。 (2)直鎖部とキラルなアルキル基が互いに入れ替った関係にある2つの異性体物質の結晶構造解析を行い,それぞれの物質が全く異なる液晶相をとることが結晶構造と密接な関係をもつことを明らかにした。 (3)比較的簡単な分子構造をもつ アルコキシシアノビフェニルのヘプチルおよびオクチル同族列について,単結晶の育成を行い,前者には3つの結晶形,後者には4つの結晶形が存在することを見いだした。 (4)ヘプチルオキシシアノビフェニルの板状晶について構造解析を行い,既に解析済みの針状晶との比較を行った。両者は,シアノ基の配列が異っており,前者ではシアノ基が網目状に近接しているが,後者では,二量体的に近接している。またそれぞれの結晶多形について,一定速度で昇温しながら,赤外ラマンスペクトルの測定を行い,転移機構および各相間の関連を検討した。 (5)オクチルオキシシアノビフェニルの平行四辺形板状晶について構造解析を行った。この結晶ではヘプチル同族列の2つの多形とは異り,シアノ基とビフェニルが近い関係にある。他方,正方形板状晶および針状晶は,ヘプチル同族列の対応する結晶形と同形であることが示唆された。さらに,示差走査熱量測定により,各結晶形の転移挙動を検討した。
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