研究概要 |
1.極低温トンネル反応H_2+Dの速度定数の絶対値測定 D_2-H_2(1mol%)を4.2Kでγ線照射し、4.2Kに放置すると、生成したD原子は徐々に減少しH原子はほぼ一定である。これをH,D原子同志の結合反応とH_2+D→H+HDトンネル反応との間で競争過程を考え、速度式をたて、H_2+D反応の速度定数を求めた。また照射後4.5Kに放置して同様な取り扱いを行い速度定数を求めた。この結果、速度定数には二つの値があることがわかった。即ちk=2.7×10^<-1>〜4.9×10^<-1>cm^3mol^<-1>s^<-1>および3.9×10^<-4>〜2.6×10^<-3>cm^3mol^<-1>s^<-1>である。この内速い反応は分子配向が良い場合と思われるので、この値と理論的計算値との比較を行なった。これまでにHD+D;H_2+H;H_2+Dの三つの極低温トンネル反応の速度定数を実験的に測定出来た。 2.極低温トンネル反応H_2+H反応に対する回転量子状態の影響 極低温固体H_2中へのH原子はH_2+H反応を繰り返しながら拡散し減衰する。今回p-H_2およびn-H_2(o-H_2 75%)の固体中のH原子の拡散減衰速度を測定し、H_2+H反応の速度定数を求めた。4.2Kでp-H_2はJ=0,o-H_2はJ=1の回転量子状態にあるので、p-H_2(J=0)+H→H+p-H_2(J=0)およびo-H_2(J=1)+H→H+H_2(J=0.1)の速度定数はそれぞれ43および12cm^3mol^<-1>s^<-1>の値を得た。これは回転量子状態が低い方がトンネル反応を起し易いことを示している。J=0の状態ではH_2分子は等方的で全ての分子が反応し得るが、J=1のH_2分子は三つの空間的配向をとり、その内の一つだけが反応すると考えるとJ=1の方が反応速度は遅くなる。
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