研究概要 |
N,N-ジメチルアミノベンゾニトリル(DMABN)と3,5-ジメチル4-N,N-ジメチルアミノベンゾニトリル(TMABN)の蛍光のスペクトルは極性溶媒中で、通常のπ-π^*バンド以外に、6000〜7000cm^<-1>長波長側に振動構造を持たない幅広い蛍光が観測される。このバンドは、溶媒温度、圧力などの媒体条件によって、大きな影響を受ける。それに対して、N-エチル-5-シアノインドール(EIN)とそのカルボン酸エチルエステル(EICEE)では、この長波長側のバンドは観測されない。今回、これら4種の化合物について、極性溶媒(アセトニトリル)と非極性溶媒(n-ヘキサン)中で、蛍光スペクトルの温度効果と圧力効果を測定した。 その結果、DMABNとTMABNの長波長側の蛍光は、分子内でのN,N-ジメチル基とフェニル基との間でのねじれ回転を伴う、コンフォメーションの変化によって生じる電荷移動状態、すなわち“TICT(twisted intramolecular charge-transfer)状態“からの発光であることが結論できた。 さらに、圧力効果の測定結果を用いて、DMABMとTMABNのTICT状態の双極子モーメント(MTICT)を決定した。その結果、DMABNではMTICT=27.7Dであり、TMABNではMTICT=22.5Dであった。いずれも非常に大きな電荷分離をしていることが分る。また、TMABNの方が、約5D小さな値である。これはメチル基の導入に伴って、電荷分布の非局在化に起因するものと考えられる。
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