研究概要 |
1.デュアルリニアイメージセンサーを現有のピコ秒レーザーホトリシスシステムに組み込み,ピコ秒レーザーシステムにおけるモニター光の不安定性を改良し、測定の簡便化とともに精度の向上を計った。 2.ヘモグロビンやミオグロビンなどのヘム蛋白質と配位子(O_2やCO)の結合反応について,その溶媒効果を検討した。すなわち,多価アルコールの添加により蛋白質内部から配位子が再結合する反応が非指数関数的な挙動を示すばかりでなく再結合する配位子の割合も増加することが認められた。これらの結果はヘム蛋白質に一般的な挙動であると考えられるが,その解釈とともに相互作用様式についても検討した。 3.トリエチルアミンを含む種々の溶媒中において9,10-ジブロムアントラセンの光励起により生成するエキシプレクッスやフリーラジカルを見いだし,反応機構および媒体の影響について論じた。 4.9-ブロムアントラセンや9,10-ジブロムアントラセンの最低励起三重項生成に対する温度効果を検討し,三重項生成過程には,最低励起一重項状態からエネルギー的に少し高いところにある高励起三重項状態を経て生成するばかりでなく直接最低励起三重項状態を生成する過程も存在することを見いだした。 5.ベンゾフェノンと2,5-ジメチルヘキサ-2,4-ジエンとの基底状態錯体を直接光励起することにより電子移動により生成したイオン対あるいは励起錯体の吸収がピコ秒オーダーで生成減衰することを見いだした。 6.アントラキノンの1,4-位にメチレン鎖を導入することによって分子構造を歪ませた[6]-1,4-シクロファンアントラキノンを合成し,その光化学反応について低温室温定常光照射およびナノ秒レーザーホトリシスによって検討し,興味ある結果を得た。
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