研究概要 |
配位化合物の固体結晶(特に6配位錯体)においては隣接する金属イオンは配位子,対イオン,結晶水分子の存在のために錯イオン間の相互作用は極めて弱く,金属まわりの発色団の光励起状態は結晶において結晶全体に広がらず比較的局在すると考えられる。まず純錯体結晶中での励起移動の速度について明らかにした上で,異なった2種の各陽陰イオン錯体から成る複塩間の固体中における光電子移動反応の速度と逆反応の速度の知見を得る事を目的とした。 発光性の6配位錯体としてRu(bpy)_3^<2+>塩をとりあげ、錯体の対イオンの種類を変えて結晶における励起移動について検討した。結晶の発光寿命は、結晶水の有無や対イオンの種類により大きく異なり、特に各種結晶の燐光減衰の励起光強度依存性を調べた結果、高密度励起になるにつれ励起状態の2分子消失が起きていることを明らかにした(平成4年光化学討論会で発表)。同系試料(Zn(bpy)_3^<2+>塩)による希釈効果、スペクトル重なりを持つエネルギーアクセプター金属錯体(0s)のドープ効果、励起光強度依によりエネルギー移動速度は極めて遅いことを確認した。また対イオンは、結晶格子・金属中心間の距離を決めるだけでなく第二配位圏として励起状態の発光寿命・収量に微妙に影響を与え、そのHOMO・LUMOのエネルギーに相関して寿命が変化している。この極限として対イオンに電子のアクセプターになる錯イオンを用いた複塩結晶が有り、同時進行的に研究を進めた。多くの複塩は無発光性になり、その緩和過程として固体中で電子移動、及び逆電子移動が起きていると考えられる。一例としてバソフェナントロリンジスルホン酸(bps)を配位子として用いたRu(bps)_3^<4->とCo(bpy)_3^<2+>とのイオン対状態で電子移動が起こり、その逆電子移動は比較的遅いことを過渡吸収法により見いだした。その他多く複塩結晶について検討した。
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