研究概要 |
分子科学研究所のUVSOR施設に設置されている光電子-光イオン、光イオン-光イオン、光電子-光イオン-光イオンの多重同時測定システムを用いて、OCS,NO,CO,CO_2,SO_2などの気相分子の1-3価イオン化について調べた。その結果これらの分子の1-3価分子陽イオンの生成と解離のダイナミクスについて多くの新しい知見を得た。1.OCS,NO,COの2価イオンの解離にともなって解放される運動エネルギー分布を、解離のしきい近傍から100eVの領域で調べ、2価分子イオンの生成と解離が複雑な機構(中性の高励起分子や1価の高励起分子イオンの解離前や解離後の自動イオン化)によっていることを明らかにした。2.OCS,NO,COの1価、2価、3価イオン化断面積を決定し、1-3価分子親イオンのイオン分岐比とそれぞれのフラグメントイオンの生成部分断面積を求めた。また各価数の親イオンが解離する割合も明らかにした。3.光電子-光イオン-光イオンの3重同時計測から、OCS,SO_2,CH_3Fの2,3価イオンの解離のダイナミクスを調べた。ABC^<2+>→A^++B^++Cのような3体解離のメカニズムは46〜80eVの範囲では励起エネルギーに依存しておらず、サイトに固有な2つの正孔の存在が解離に寄与していることが示唆された。 4.CO^<2+>→C^++O^+の解離過程で生じる2つのフラグメントの異方性分布を求め、親イオンの電子状態の対称性と放出光電子波の対称性で決まる全体の対称性と関連づけて検討した。CO_2とSO_2の測定データは解析中である。
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