研究概要 |
(1)K_3C_<60>の振動および電子状態のラマン散乱による研究 C_<60>,K_3C_<60>,K_6C_<60>60の1.16eV(近赤外光)の励起光によるラマン散乱の測定を行って、K_3C_<60>では伝導電子による電子ラマンが出現し、K_6C_<60>では278cm-1に現れるsquashing modeにFano共鳴が現れることを明らかにした。この研究により分子内振動と強く結合したK_3C_<60>の伝導バンドの性格を明らかにすることが出来た。 (2)K_3C_<60>とRb_3C_<60>における同位体効果 ^<13>Cの濃度を高めたC_<60>を合成し、上記の物質の超伝導転移温度の同位体効果をLFS法によって調べた。その結果BCS理論で予想される転移温度の変化(Tc∝1/m^α;α=0.5)よりもかなり大きな変化(α=1.2-2.2)を示すことが分かった。これはC_<60>の同位体置換率が100%でないことと関連しているものと解釈している。この実験結果は現在フラーレンの超伝導の機構を考える上で大きな問題となっており、まだ論争が続いている。 (3)K_xC_<70>の電子状態のx依存性 この研究ではESRとLSF法を用いて、ドーパント依存性を調べた。その結果x=4の付近でESRの線幅、強度ならびに温度依存性が急激に変化することを見出した。しかもx=4付近の温度依存性は金属状態のK_3C_<60>のものに酷使している。K_xC_<70>についてはこれまでに主に薄膜状態でドープされた試料について光電子分光法によって研究されてきた。x=3-4で金属状態を形成するという主張と全領域で半導体であるという説とがあったが、この研究によりx=4の付近で金属状態が出現することを明らかにした。
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