研究概要 |
本研究の目的は、化学反応における中間体として重要な役割を担うものとして注目されているラジカルなどの不安定分子種について、電子励起状態を含めて幅広いエネルギー領域での準位構造を明らかにすることにある。この種の研究において常に問題となるのは対象分子種をいかに効率良く生成するかであるが、本研究では当研究室で開発したパルス放電超音速ジェット法を適用し、高感度な測定法として確立しているレーザー誘起蛍光(LIF)法と組み合わせることより、ラジカル種などの電子スペクトルを測定する。本年度においてはそのための装置の製作・整備を重点的に行った。質の良いスペクトルを得るためには、できるだけ多量の試料ガスを流して強い信号強度を得ることが重要である。そこで、3000l/sの高速排気能力を持つ既存の真空装置をLIF測定用に改造した。この真空槽に取り付けたレーザー光導入部や蛍光の集光系は、放電などによる迷光の影響をできるだけ取り除き微弱な蛍光を効率よく検出できるように設計した。ラジカルなどの生成源として用いるパルス放電ノズルにもさらに改良を加えた。その結果、フーリエ変換マイクロ波分光器と組み合わせて使用することにより、C_4S,C_5S,HC_3S,HC_4Sという一連の新しい不安定分子種を検出することができた。このことは従来の結果と合わせて、パルス放電ノズルが直線状の炭素骨格を持つ不安定分子の生成に特に有用であることを示すと考えられる。直鎖炭素ラジカルは可視領域に電子スペクトルを持つと期待されるので、本研究の有力な研究対象となり得る。
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