研究概要 |
1.野外観測結果の地中温度,地中熱流量の測定データを基に地中熱フラックスの解析を行なった。その結果,夏季は日変化はあるものの平均的には深度60cmまで下向きの熱フラックスが見られ、秋季には深度60cmと30cmの間に熱の収束面があることが分った。 炭化水素の骨格炭素の一個を炭素と同族の第IVb族元素に置換した化合物を低温固相マトリックス中でイオン化放射線で一電子酸化してカチオンラジカルを生成し、その電子構造およびダイナミックスを電子スピン共鳴(ESR)分光法で観測した。研究実績の概要は次の三項目にまとめられる。1.シクロブタンの骨格炭素を一個ケイ素に置換したシラシクロブタン(cSiC3)系カチオンラジカルの電子構造およびダイナミックスに関する研究を行なった。選択的に重水素およびメチル基を導入した試料を用いて、ESRスペクトルの確実な解析を行い、また高精度な磁気パラメータを得ることに成功した。その結果、中性分子は非平面C_s構造をとるが、一電子酸化で生成するカチオンラジカルの極限構造はSi‐C結合の一方が伸び、非対称に歪んだC_1構造をとることが解った。さらに、等価な二つの非平面C_1構造間で四員環の反転を観測できた。環反転の速度定数の温度変化を評価し、さらに環反転の活性化エネルギーを評価すると1Kcal/mol以下と小さな値が得られた。4Kの低温でも環の反転がおきることより、量子力学的トンネル機構が示唆される。2.シクロヘキサン骨格炭素の一個をケイ素に置換したシラシクロヘキサン(cSiC5)は、一電子酸化を受けると、中性の椅子型C_s構造からSi-C結合の一方が伸び、非対称に歪んだC_1構造に変化することが解った。さらに、4Kの低温でも、二つのSi-C結合間で結合伸縮交替が観測でき、この現象も量子効果で説明可能である。3.IVb族元素を中心原子(M)とするテトラメチル化合物、M(CH_3)_4、カチオンラジカルは中心原子(M)が炭素、ケイ素、ゲルマニュムおよびスズのとき、各々、C_3_v、C_2_v、C_2_vおよびC_3_v構造をとることが解った。これらの成果の一部は、昨年秋の討論会(分子構造、ESR,放射線化学)にて口頭発表し、また学会誌に報告した[Chem,Phys,Lett 188,93-99(1992);200,580-86(1992)]。
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