研究概要 |
パルスレーザー光照射による時間分解マイクロ波誘電吸収法を適用した実験的研究により、以下の主要な成果を得ることができた。 1、芳香族ジアミン類であるテトラメチルパラフェニレンジアミンとテトラメチルベンジジンについて、種々のハロゲン化合物(ハロゲン化ベンゼン、ハロゲン化アルキルなど)の存在下で生成する接触イオン対の生成効率と生成反応機構は、通常の電子移動反応の特性とは一致せず、気相におけるハロゲン化合物の電子付着反応の性質と良い相関性があることがわかった。この結果は、通常の過渡光吸収測定による実験でも裏付けられた。 2、アニリンとその誘導体(ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン)、およびベンゼン環に置換基をもつ誘導体(o-,m-,p-アニシジン、p-クロロアニリン,p-ニトロアニリン,p-シアノアニリン)の励起三重項状態の双極子モーメントを決定した。半経験的分子軌道法による計算も同時に行い、本研究による実験値の妥当性が示された。また、励起状態における電子密度分布と幾何学的構造に関する知見が得された。 3、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンいずれの系でも四塩化炭素溶媒中では励起三重項状態にくらべて極性の異常に大きな中間体が生じること、それが接触イオン対である可能性が強いことが示された。 4、ベンジルの308nmレーザー光照射では、すでにしられている355nm励起の場合と異なり、励起三重項状態の生成に加えて、ベンジルが解離してベンゾイルラジカルを生成する過程が存在し、その量子収率が約0.3であることが示された。 5、低温下での励起三重項状態の双極子モーメント決定については、検出感度の向上と基底状態分子を用いた感度校正測定の改善が課題である。
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