研究概要 |
真空紫外レーザー光を光源とした顕微光電子分光法の開発と,それを用いた金属表面への酸素吸着過程の研究を行なった。光電子分光法では,通常〜mm程度の領域の平均的情報しか得られないが,昨年までに開発したレーザー光電子分光顕微鏡では,3〜5μmの領域の光電子スペクトルを0.1eVのエネルギー分解能で測定することができる。本年度は,ターボ分子ポンプを購入して排気速度を向上させるなどの改良を行なった。その結果,ガス導入の制御が可能になった。これを用いて銅表面への酸素吸着過程の観測を行なった。微細な傷のついた銅(111)面の光電子スペクトルには,傷の部分での電子状態の乱れが顕著に現われる。試料面の場所ごとの光電子スペクトルを記録した上で,sp電子のバンド強度を指標にすると傷の形状を画像として捉えることができた。 この表面に酸素を導入すると,傷の幅が見かけ上減少する事が観測された。酸素吸着による傷の形状の変化は,場所による吸着確率の差異とバンド構造の変化を反映している。吸着による電子状態の変化を局所的に捉えることが可能になったので,吸着反応の機構をより明確に知ることが可能になった。さらに,ここで用いた顕微光電子分光法は,従来にはない新しい測定法である。今回の結果は,新らしい測定法としての意義と有効性を例示している。
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