研究概要 |
高出力超音波によって,低温の均一溶液中に局所的に高温状態を形成させた反応場中でラジカル連鎖を開始させるという新しい実験手法によって,これまでの熱的なラジカル反応の条件では実現できないような高い選択性で,長らく制御が困難とされてきたラジカルの空気酸化反応を実現することができた.この研究を通して酸素化を伴う分子内環化反応の開発と超音波反応のスケールアップなどの実用面も含めその一般性を確立することができた. 具体的には以下の3点について成果を得た(1)酸素化反応の反応機構の研究.超音波制御下の酸素化反応では,アルキルラジカルの発生とその酸素との反応の過程に超音波による微妙な制御が働いて初めて高選択的な酸素化反応が起きているが,ここでの超音波の役割を実験的に明らかにし反応条件の最適化を計る事ができた.またこれによって,反応を有機合成的に有用な規模で行うめどがついた.(2)ヒドロキシスタンニル化反応の開発.オレフィンやジエン類にスズヒドリドを空気存在下で作用させるとスズラジカルの付加に引き続く酸素分子との反応がおき,1段階でスタンニル基と水酸基を導入できるという全く新しい形式の反応を見つけることができた.これによってアリルスズ化合物の新しい合成法を確立できた.(3)分子内5員環環化反応のScope and limitationの検討する一方,抗生物質brefeldin A,Cを標的として,立体化学制御を伴う酸化的渡環型分子内ラジカル環化反応という新合成戦略の立案を行った.
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